「少子化時代の学校教育」

先日、NHKスペシャル「日本の教育を変える!~インド出身副校長 波乱の1年」を観ました。元教師だった私にとっては、とても示唆に富む内容でした。またその前日に、元麹町中学校長の工藤勇一氏がNHKラジオで「少子化時代の学校教育のあり方」について話していましたので、今回はそれも併せてご紹介したいと思います。

【少子化の現状】
◆先日、日本の出生数が予想より10年も早く80万人を切ってしまったというニュースが流れました。日本の人口は、2004年をピークにずっと減り続けています。この20年急激に人口が減っているのです。
◆しかし2004年よりも前の時代は、今とは真逆でものすごく人口が増えていた時代だったのです。特に明治維新の頃の日本の人口は3800万人位でしたから、その後ピークの2004年には1億2000万人になったのですから、約130年間に日本の人口は約4倍になったのです。ざっと計算すると、毎年70万人も増えていたのです。
実に今、この毎年70万人増えていたスピードと同じ勢いで、毎年約70万人~80万人が同じスピードで減り続けているのです。

【人口減少と経済】
◆人口が増え続けていた時代は、物を買う人がどんどん増えるわけですから、物の値段を高くしても売れるわけです。
会社は儲かるのですから、一人一人の給料も当然上がるという時代でした。
ですから、誰かが成功したビジネスモデルを真似しても、その会社も成功できた時代だったのです。
◆しかし今は、真逆のことが起きているのです。物を買う人が減っているのですから、物は簡単に売れません。誰かが成功した仕事を真似しようとしても、買ってもらうためには質を保ちながらより安くするすることが必要になってきます。安く売らないといけないのですから、当然賃金は上がりません。ますます購買力が下がるという悪循環に陥ることになります。つまり、人口が増え続けていた時代のビジネスモデルは、人口減少時代には通用しなくなるということです。
◆以上のことから、人口減少時代のビジネスには次の
2つの視点が必要になるのではないでしょうか。
①安売り競争に巻き込まれるのではなく、オンリーワンの製品、付加価値を付けた製品を高く買ってもらう。
②人口が減り続ける国内の消費者に目を向けるのではなく、人口が増え続けている海外に目を向けて商売をする時代になるのではないでしょうか。

【少子化時代の学校教育】
◆人口減少だけでなく、チャットGPT(生成AI)などいろいろな課題が多い中、以上のことを念頭に置いて、これからの学校教育のあるべき姿を考えてみましょう。
人口が増えている時代であれば、学校を卒業して会社に入れば、定年まで安定した収入を得ることができたでしょう。
ところが、少子化で人口減少の時代になるとそういうわけにはいきません。
ITをはじめとした科学技術がものすごい勢いで進化してくるでしょうから、会社が従来のままでは存続できるかどうか分かりません。
そのような時代を生きる子どもたちも当然、上司の指示をただ聞いていたり、上司のいうことをうのみにしてただ従順に従ったりするだけの人間では社会の中で生き残れないということです。
つまり、これまでのようにいい学校に行って、いい会社に入るための知識偏重の学校教育ではダメだということです。 

◆それでは、これからの時代の学校教育は子どもたちをどのように育てるべきなのでしょうか。
①自分で学ぶことを見つけたり、自分に合った学び方を選んだりできる。
②自分の頭で考えて行動できる。
➂多様な人たちと共生できる。
④いろんなことを子どもたち自身が選択して決定することができる。
⑤意見の異なる相手とも議論しあうことができる。

◆以上、主なことを5点だけ挙げましたが、視点を変えればさらにいろいろ取り上げることができると思います。
いずれにしても、授業スタイルをはじめ、これからの学校教育は大きく転換する必要があるのではないでしょうか。