「陽にとらえる」

去年の暮れ、ある知人から「職場の人間関係に悩んでいるので、話を聞いてくれる?」という電話がありました。 そこで話を聞くと、気の合わない同僚の短所を次から次へと並べ立てたのです。 その知人の心中を察すると、その気持ちはわからないではありません。それも仕方のないことと思いますが、相手の短所を並べ立てているだけでは何の解決にもなりませんし、人間関係は良くはなりません。
そこで、今回は江戸の商人しぐさのおつき合いの知恵の中から「陽にとらえる」についてご紹介いたします。

誰かと気が合わないとか、物事が思ったようにはうまくいかないとかということはよくあります。 そんな時、並の神経の持ち主なら気が滅入って暗くなってしまいますが、この点、江戸っ子と呼ばれた人たちは陽気で楽天的だったようです。たとえ気が合わなくても、相手の短所を十分に飲み込んだ上で、できるだけ良い面を見ようとしていたようです。
物事は捉え方次第で、良い方向にも悪い方向にも考えられます・ 捉え方ひとつで人生は変わるもの。だったら肩の力を抜いて良い方向に捉え、陽気に振る舞う方がいい。 そんな生き方を商人しぐさでは「陽にとらえる」といいます。
西洋では物事を「善」と「悪」の二つに分けて考えますが、、東洋では「陰」と「陽」、つまり、一つの物事には良い面と悪い面が共存すると考えます。それは人とのおつき合いにおいても同じ。 陰(短所)があるから、陽(長所)が見える。また、その逆も同じです。 どちらも理解し、認め合いながらおつき合いをすることが長続きのコツだということを江戸の人たちは知っていたようです。

それでは、どのような生き方が「陽にとらえる」ことになるのでしょうか。 大切なのは、次の二つ。 ①相手の長所を見い出そうとすること、 ②相手を尊重すること、の二つです。 相手の良い面を見ることで、おつき合いは円滑に進みます。 短所を見つけて批判するばかりではなく、むしろ長所を探すことにエネルギーを注ぐことが大事。ポジティブ(肯定的)な思考は、がんじがらめの固定観念を取り払ってくれるものです。

そうはいっても、相手の短所を十分に飲み込んだ上で、それを長所として捉え直すのは難しいですよね。 そこで、ちょっと練習をしてみましょう。
まず始めに、身近な人の短所を3つ書き出してください。 私もある人の短所を書き出します。 次に、書き出した短所を、視点を変えて長所として捉え直してみてください。
私の場合は、①いいかげん → おおらか、 ②気が多い → 好奇心旺盛、 ③飽きっぽい → 切り替えが早い です。 いかがですか?
「いいかげんで、気が多く、飽きっぽい人」とはあまりおつき合いしたくありませんよね。 でも、「おおらかで、好奇心旺盛で、切り替えが早い人」だったら、おつき合いをしてみたくありませんか? そして、何よりもこれまでは避けたいと思っていた相手でも、何となく受け入れられるような気がしませんか?
これからも時々、いろんな人の短所を書き出して、それを長所として捉え直してみてください。 短所よりも長所を認め得ることができて寛容になり、人とのおつき合いがしやすくなると思いますよ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。