「自治体主催の成人式」

今年は1月10日(月)が「成人の日」でした。この日、全国各地で自治体主催の「成人式」が開かれ、今年も新成人たちの問題行動がニュースで取り上げられました。もちろん、ほとんどの新成人たちは真面目に式に出席しています。 しかし、たとえ一部とはいえ、新成人の問題行動がまるで「成人式」の風物詩のようになっている現実に、はたして自治体主催の「成人式」が必要なのだろうかと、毎年感じてきました。
そこで今回は、「成人式」について一緒に考えてみませんか?

【成人式とは】
そもそも「成人式」とは何でしょうか。
◆「成人式」とは、成人式を祝う年度内に満20歳となる人々を学齢ごとに各地の自治体が1月第2月曜日(「成人の日」)に激励・祝福する行事です。 日本政府の主催ではなく、各自治体が自主的に行っているため、「成人の日」以外に実施する自治体もあります。
◆今日の「成人式」の形態は、1946年11月22日に埼玉県の蕨町(現蕨市)で実施された「青年祭」がルーツと言われています。 敗戦直後、時代を担う青年たちに明るい希望をもたせ励ますため、当時の蕨町青年団長だった高橋庄次郎氏が主唱者となって「青年祭」を企画したそうです。
蕨町の「青年祭」に影響を受けた日本政府が、2年後の1948年に公布・施行された祝日法により、「おとなになったことを自覚し、みずから生きぬこうとする青年を祝い励ます」という趣旨のもと、翌1949年から1月15日を「成人の日」に指定しました。 それ以降、ほとんどの地方で「「成人式」がこの日に行われるようになりました。
◆本来、「成人の日」は「七五三」などと同様に「通過儀礼」の一つに過ぎないはずです。
「通過儀礼」とは、人が一生のうちに経験する、誕生・成人・結婚・死亡など、年齢的に重要な節目に当たって行われる儀式のことです。特に、子どもの健やかな成長を祈る通過儀礼はたくさんあります。「七五三」をはじめ、かつての「元服」が現在の「成人の日」に当たるといえます。
2022年4月から民法改正により成人年齢が18歳に引き下げられます。 そのため、「成人式」を20歳で実施する自治体と、18歳で実施する自治体に分かれるようです。いずれにしても、各自治体は「成人式」を再考すべき時ではないでしょうか。

【「成人式」の問題点】
①趣旨再定義の遅れ
元来の趣旨である「新成人が、大人になったことを自覚するための行事」であったはずが、そのように自覚している新成人は多いとは思えません。むしろ、「友だち同士が再会する『同窓会』のような行事」になっているのではないでしょうか。 また、「スーツや晴れ着を着て、新成人が一堂に会する行事」と思っている新成人が2割余りに及んでいるといいます。さらに、歌手などによるコンサートなどのアトラクションが必要だと思っている新成人が5割を超えているのです。 これではもはや「成人式」本来の趣旨は失われているといっていいでしょう。
②出席率の低下
1970年代になると受験戦争の激化により、試験日と重なって「成人式」に出席しなかった新成人が多く見られるようになりました。 平成30年の出席率は、全国平均6割、さいたま市76%、調布市54%、京都市50%でした。少子化の影響もあり、出席率の減少傾向は今後ますます大きくなることでしょう。
➂モラルの低下
「成人式」の一番大きな問題点は、やはりモラルの低下といっていいでしょう。
出席者の減少によって会場の空席が増えたため、これまで会場に入らなかったような新成人が会場に入れるようになり、暴れまわるなど問題行動を起こすようになったのです。
また、外面的には問題がなさそうな新成人たちも、私語が収まらない、会場内で携帯電話を使う、来賓の話を聞かないなど、モラルの低下が顕在化しています。
このような現象のことを「成人式での七五三現象」というそうです。笑い事ではありませんよね。

【これからの「成人式」とは・・・】
2022年4月から民法改正により成人年齢が20歳から18歳に変更されることは先ほど申し上げました。 しかし、「成人式」の対象年齢が変わっただけで、内容が変わらなければ無意味ですよね。
そこで、次のようなことを提案したいと思います。
①地方自治体が主催の「成人式」を廃止する。(実際、廃止したいができないと考えている自治体が少なからずあるといいます)
②18歳前後の若者たちが実行委員会を作って主催者となり、自主的に行事を運営する。
➂趣旨は「大人になる自覚を深め、将来の目標や決意などを明らかにすること」
主な内容としては、「「将来の夢や希望」「こんな大人になりたい」「こんな社会にしたい」などを発表する。
④招待者は、周りの大人や教育関係者、自治体関係者、政治家など、自分たちの夢の実現や理想のまちづくり・社会づくりに協力・支援してくれる大人たち。
⑤行事の名称は「立志式」など、成人としての志を表すもので、自分たちで工夫すること。

◆以上、思いつくままに提案しました。 ご感想はいかがでしたでしょうか。
これからの社会をつくるのは若者たちです。 若者たちには、どんな境遇にあっても決して夢や希望を諦めることなく、理想に向かって歩んでほしいと願っています。それが若者の特権なのですから。

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