「“人材”?それとも“人財”?」

突然ですが、皆さんには気になる言葉はありますか? 私には「~のおかげ/~のせい」使い分けなどいくつか気になる言葉があります。その中で最近気になっているのが「人材」と「人財」という言葉です。
それは東京新聞に高校生が投稿したことがきっかけとなって生まれた言葉の使い方に関するいくつかの賛否の声でした。 私も高校生の投稿に共感したので、記事を切り抜き、いつかブログで取り上げたいと思っていました。

そこで今回は「人材」と「人財」について考えてみたいと思います。

【「人材」の表現に違和感】
◆今年9月、高校2年生の男子生徒が「人材」という言葉について次のように投稿しました。
『「人材」。よく使われる言葉だが、資本家が労働者を使って当たり前なのだ、といったニュアンスが含まれているように思えるので、一抹の怒りを感じる。
「人材」という言葉は、「木材」と構造が同じだ。 「木材」はホームセンターにいくらでも転がっている。「人材」だってハローワークで簡単に手に入る。 「労働者は『もの』である」といった偏見がしみついている。
このような言葉は封印してしまうべきだと思う。 社会を変えるのは大変だが、言葉なら少しの勇気があれば、変えられるのではないだろうか』
※皆さんは「人材」という言葉をどう感じますか?

【「人材」から「人財」へ】
◆この高校生の投稿を受けて、東京新聞がいろいろ取材し、11月に『「人材」から「人財」へ』という見出しで1面トップに掲載しました。 さすがです。 簡単に内容を紹介します。
※12月に全面改訂される三省堂国語辞典に「人財」という言葉が初めて収録される。
そもそも「人材」という言葉は、「はたらきのある、役に立つ人物」の意。 『「逸材」「適材」のように「材」は才能の意味。悪い意味はない』と三省堂辞典編集委員は解説する。
※一方、「人を大切にする経営学会」の坂本光司会長は、「高校生の意見は当然の感情」と話す。 「働く人をコストと位置付ける企業の考え方の表れ。 働く人をかけがえのない財産と考える『人財』の意識がもっと広がるべきだ」と説く。
※SOMPOひまわりは部署名に「人財開発部」と命名している。 「社員一人一人の成長が会社のパワー。社員を大切に考えているという会社の思いを込めた」と意図を説明する。
※トヨタ自動車はトップコメントなどで「人財」を使う。「全社員の可能性を信じ、一人一人の思いを尊重することを企業理念に掲げている。学歴や性別など、可能性を阻害する壁を取り払い、全社員が活躍できる場をつくることが会社の使命」と話す。
※若者の雇用問題に取り組むNPO法人「POSSE]の代表は、高校生の声に「かつては、会社が成長するために社内で育てるのが『人材』だったが、今はコスト削減のためにいつ切り捨てられるか分からず、人材になるのが怖い時代」と寄り添う。そして「使いつぶしの経済から脱却できない限り、どんな言葉を使おうが、若者が生きづらさを感じる状況は変わらないのでは」と指摘する。
※取材したそれぞれの見解を高校生に伝えると、「役に立つか否かで人間をとらえることに違和感を感じていた。 人は無条件に価値がある存在だと、自分は思う」と思いを語った。

【「財」の字 逆に冷たさ】
◆「『人材』から『人財』へ」の記事に対して、50代の会社員から反論が投稿されました。
『「材」から「財」への変更が人を尊重する理念をより深く表現しているかのような風潮には賛成しかねます。
「木材」はかつては価値の高いものの代表であったはずです。 それがホームセンターにいくらでも転がっていると言われる現代は、その育成から流通までが見えにくく、消費者に届きにくい社会の便利さの裏返しかもしれません。
一方、「財」
は貨幣を基礎に価値を測るものとして、私には逆に冷たく感じます。 「人財」をうたう企業に対して抱く印象はマーケティングに意識を持っていることの表れ以上のものではありません。
とはいえ、若い読者の投稿が、現代社会を考えるきっかけになったことは良かったと思います』

◆ご感想はいかがでしたか?「人材」と「人財」のどちらが良いと思うかということよりも、会社員の方がいうように、今回の高校生の投稿を通して現代社会を考えることができたことは、私にとってとても意義があったと思います。
これからも気になった言葉があったら、そのままにしないで話し合ったり意見交換をしたりしたいものですね。