「日本の選挙制度の課題」

昨日(11/30)、立憲民主党の代表が決まりました。 9月の自民党総裁選と今回の立憲民主党の代表選を比べて感じたことは、「老獪(かい)さと青臭さ」、「既得権と誠実」です。この2つの政党の違いがはっきり見えてとても興味深く思いましたが、私自身は「青臭さと誠実」に期待しています。 また、同時期にドイツの帝国議会選挙(総選挙)の様子とメルケル首相から新首相にショルツ氏が決まるまでの過程も見てきました。
そこで今回は、「日本の選挙制度の課題」と題して、考えたことを紹介します。

【日本の選挙制度の課題】
◆現在の日本の選挙は現職優先で行われているため、いろいろな問題が生じています。 その代表的な課題として、次の3点について考えてみたいと思います。
①女性議員がすくない(衆議院議員  47人/465人)
②若手議員(20・30代)が少ない(衆議院議員  9人/465人)
➂世襲議員が多い(衆議院議員 109人/465人)

《女性議員が少ない》
◆欧米では女性議員が多いのに、日本で女性議員が約10%と少ないのはなぜでしょうか。
欧米で女性議員が増えたのには、世界的な2つの大きな波がありました。
(第1の波)1960年~70年代 ウーマンリブ運動 → 女性の社会進出
(第2の波)1990年代半ば~ ジェンダー平等への取り組み → 政治・役員への女性進出
実は、日本は2回とも波に乗り遅れて成果を出せなかったことが今につながっています。
例えばフランスでは、ジェンダー平等への取り組みによって女性議員の活動が活発化し、2000年に「パリテ(同数)法」を施行しました。そして、この「パリテ法」に違反すると段階的に助成金が減額されました。 その結果、女性議員が39.5%までになったのです。
◆フランスのような「パリテ法」と助成金減額をすぐに導入するのは無理としても、同じような「クォーター制」(一定の割合を決める)を導入できるはずです。
実際、日本でも2018年に「立候補者男女均等法」が成立しているのですから、違反したら助成金を減額するという実効性を持たせれば、日本でも女性議員が増えるのではないでしょうか。

《若手議員が少ない》
◆日本では選挙に出馬するための供託金が、小選挙区で300万円、比例代表で600万円必要です。
一方、イギリスでは約7万円、アメリカ・フランス・ドイツ・イタリアでは供託金がありません。 世界で最も高い日本の供託金を若い人たちが簡単に出せるはずがありません。 政治家になりたいという志がある若い人たちのためにも供託金は下げるべきではないでしょうか。
◆また、イギリスでは被選挙権は18歳からで、候補者個人の後援会が禁止されています。 選挙は党営で、立候補したい人は希望する選挙区に願書を提出し、立候補者名簿に登載してもらいます。 政党は若くて有能な立候補者を時間をかけて育てていくそうです。
◆政治家を志す若い人たちを時間をかけて育てていくという意味では、「ドイツの政治教育」や「北欧の政治教育」で見てきたように、日本でも学校での政治教育(主権者教育)が必要なことはお分かりになると思います。
◆即効的に若手議員を増やすためには、やはり供託金を立候補しやすい金額にまで下げることや各政党が若手候補者を丁寧に育てることが必要ではないでしょうか。

《世襲議員が多い》
◆日本に世襲議員が多いのは、政治を家業としている議員が多いということだといっても過言ではありません。
つまり、政治はオイシイ仕事であるので、(特に自民党は)後援組織をもっていて、議員が引退すると、その既得権を維持するためには息子なりが継いでくれた方が維持できるということです。自民党は組織政党というよりも個人商店型のため、どうしても世襲議員が多くなるという研究者もいます。
◆日本では現実的に現職優先のため、選挙に勝ち続けている限り世襲議員は少なくならないし、女性議員も若手議員も増えず、多様性のない政治が行われてしまうことになります。
世襲議員が一概に悪いとは思いませんが、まずは現職優先をやめて、女性も若者も年齢にかかわらず誰もが政治に参加できるようなルールをつくることが必要ではないでしょうか。

※以上、簡単に3つの課題を取り上げましたが、日本の政治が良くなるためには、政治家だけでなく、メディアも、そして私たち国民もそれぞれの立場でどうすべきか考えていくことが必要だと改めて感じました。