「北欧の政治教育」

前回は「ドイツの政治教育」についてご紹介しました。 本当でしたら、今回は衆議院選挙の結果を受けて、投票率をはじめ日本の政治が大きく変わったとご報告できることを期待していたのですが、残念ながらそのようにはなりませんでした。
投票率(55.3%)は前回とほとんど変わらず、若者の投票率も18・19歳で43%と伸びませんでした。 なぜ日本の若者の投票率は伸びないのでしょうか。
前回の「ドイツの政治教育」から、いかに政治教育が大事かが分かりましたが、ドイツだけでなく北欧の国々からも学ぶべきことがたくさんありそうなので、今回は「北欧の政治教育」と題してスウェーデンとノルウェーの政治教育について簡単にご紹介します。

【スウェーデンの政治教育】
◆スウェーデンの投票率は全体で87.2%、18~24歳(84.9%)、25~29歳(85.1%)でドイツの投票率を大幅に上回っていて驚きました。 なぜこんなにも搭乗率が高いのでしょうか。その大きな理由の1つが「選挙ブース」です。

《選挙ブース》
◆選挙が決まると、約1か月前から全国各地に「選挙ブース」を設けて、国民と対話できるようにしています。 複数の政党が1か所に「選挙ブース」を設置し、議員・党員が国民と議論したり、なぜこういう政策なのかという質問もそこでできるのです。

《中学校・高校》 模擬選挙
◆中学校・高校では、学校で政治家と討論会を開き、総選挙の日と同じ日に同じ投票用紙を使って投票するなどの試みが行われています。

《子ども議会》12~17歳
◆ヨーテボリ市では、12~17歳の子どもを対象に「子ども議会」が作られています。 使える予算は年間約400万円。子どもたちが「子ども議会」で公共交通機関について話し合い、その予算を使って平日無料にしました。さらに今年は土日も無料にすることが議論されています。

※スウェーデンでは、全国に「選挙ブース」を設置して、そこで地道な議論を進めていく。 また、子どもたちは民主主義の担い手として、民主主義のあり方を学んでいく。 選挙カーでいくら名前を連呼しても子どもたちは民主主義を学べませんよね。

【ノルウェーの政治教育】
◆突然ですが、次の質問は誰がしたと思いますか?
「無償の学校給食をどう思いますか?」「地球の温暖化のためにあなたたちは何をしますか?」
実は、これは小学生の子どもたちが「選挙小屋」で議員にした質問なのです。

《選挙小屋》
◆今年9月、ノルウェーで4年に1度の国政選挙が行われ、投票率は77%でした。 なぜノルウェーの人たちは政治に高い関心をもっているのでしょうか。
ノルウェーでも選挙カーによる選挙運動などは行われません。 その代わり、街中に現れる」各政党が設置する「選挙小屋」と呼ばれる建物です。 その地域出身の国会議員や党員たちが主張を訴え、市民からの質問に気軽に答えています。
そんな「選挙小屋」の周りで目立つのが子どもたちの姿です。 ノルウェーでは、小学生でも選挙になると授業の一環で「選挙小屋」を訪れ、議員たちにいろいろな質問をします。
9月の国政選挙では、脱石油を含む環境問題が争点になりましたが、子どもたちも国の政策を真剣に考えて、議員たちに質問していました。
「選挙小屋」では、子どもたちが「もっと移民を受け入れるべきだと思いますか?」とか「CO2の排出量を減らすために何をするの?」など、子どもたちは自ら調べ、自分の考えをもって議員たちに質問を重ねていたそうです。
各政党の「選挙小屋」で配っているのはパンフレットだけではありません。お菓子やジュースなどの他にさまざまな記念品が用意されていて、子どもたちはそれを集めるのを楽しみにしています。 子どもたちは全部の政党の「選挙小屋」を回ってバッジを集め、それを服やカバンに巣kているそうです。
そこには、記念品が目当てだとしても、政治に興味をもつきっかけにしてほしいという国としての思いがあるといいます。

《社会科の授業》
◆中学校や高校だけでなく小学校でも、社会科の教科書には、どの政党が右とか左とかのグラフが載っていて、各政党の政策まで学ばなくてはいけないそうです。
大事なのは、火k政党の政策について議論していく中で、相手の意見をしっかり聞くということによって視野が広がると同時に、自分の考えや意見がまとまっていくことにあるようです。

※ご感想はいかがでしたか? 日本の若者たちも決して政治に関心がなくて選挙に行かないのではなく、どの政党に投票すればいいのか分からないために選挙に行かないのではないでしょうか。学校で政治教育がしっかり行われているスウェーデンやノルウェーの子どもたちと政治教育がほとんど行われないまま大人になる日本の若者たちのどちらが幸せでしょうか。 将来、大人になって、グローバルな世界でろいろな課題について互角に議論し合えるのはどちらの国の若者たちでしょうか。 聞くまでもありませんよね。