「ビジョンハッカー:頼もしい若者たち」

告示前にもかかわらず、自民党総裁選が盛り上がっています。 名乗りを上げている岸田氏は「憲法は改正。モリカケは再調査しない」、高市氏は「敵基地攻撃については、いかに敵基地に打撃を与えるかが大事」、そして河野氏は「原発ゼロとは言っていない」と発言しています。 どの候補者も安倍元首相に対する忖度が感じられ、正直言って、自民党では日本は変わりそうにないというのが実感です。 それにして、彼らに限らず、政治家たちにビジョンはあるのでしょうか?
そこで今回は、自分のビジョンを実現するために世界で活躍している「ビジョンハッカー」たちをご紹介します。

【ビジョンハッカーとは】
◆グローバル資本主義が行き着いた先で、さまざまな問題や矛盾が新型コロナによって吹き出しています。 かつてのビル・ゲイツのように「何かを変えたい」「何かを良くしたい」と社会問題の解決に取り組み、社会システムを根本から変えようという若い世代が世界各地で活躍しています。 このような若者は「ビジョンハッカー」と呼ばれています。
ビジョンハッカーたちの武器はスマホ。 世界の隅々に行き渡ったこの小さなツールを駆使して仲間や資金を集め、軽やかに行動して、未だ収束しない難局を乗り越えようとしています。
今年6月、BS1スペシャルで放送された「ビジョンハッカー:世界をアップデートする若者たち」を観て、頼もしい若者たちがいることを知り、感動しました。
その中から、日本人のビジョンハッカーたちをご紹介します。

【李烔植さん(30)/日本】
《ビジョン》貧困の連鎖を生まない社会システムの実現
◆「すべての子どもたちが生まれた地域や家庭環境にかかわらず、自分たちの可能性を最大限に活かして自立できる社会を作りたい」と李さんは言います。
7年前、子どもたちに居場所を提供し、子どもの学習を支援するNPO「Learning  for All」を設立。 首都圏に20のっ拠点を構え、これまでに1万人の子どもたちを支援。
◆李さん自身はいい先生との出会いもあり、猛勉強の末、東京大学に合格。成人式で地元に帰った時が転機となりました。大学に行くチャンスさえない地元の同級生。それを自己責任だと気にもかけない東大生。 貧困の連鎖につながるこの社会システムを変えなければならない。 李さんのビジョンはこのとき生まれました。
李さんは言います、「子どもたち個人では変えられない現状。大人が社会の仕組みを変えることで解決できた話ですよね。 解決できずに残している課題が残ったまま。 誰かに不利益を押し付けて成り立つ社会なんて絶対におかしいと思う。 まずは、困窮世帯の子どもたちから社会のありようを変えていきたい」

【酒匂真理さん(25)/バングラデシュ】
《ビジョン》世界の医療格差をなくしたい
◆日本の先端技術を活用して、貧しい国でも医療を平等に受けられる社会の実現を目指しています。
酒匂さんがバングラデシュで始めたのは日本で広く行われている健康診断。 集めたデータをAIで解析。分析結果をもとにリモートでの遠隔診療を行います。医師が不足している地域でも正確な診断に導くことが可能になります。
酒匂さんのビジョンの原点は学生時代に訪れたフィリッピンにありました。 酒匂さんは医師・AI研究者らとベンチャー企業を設立し、そのビジョンを実現するために、まず選んだのが国の経済成長が著しいバングラデシュだったのです。
◆酒匂さんが打ち出しているビジョンは、援助ではない持続可能なビジネスという仕組みで、バングラデシュの医療体制に一滴を投じたいという思いからです。
酒匂さんは「来てほしい未来に対して働きかけると、より未来は近づくと思っているので、他の国にも進出したい」と抱負を述べています。

【永井陽右さん(29)/ソマリア】
《ビジョン》一人の人間としてテロリストに接し、テロのない世界を目指す
◆永井さんは、10年前ソマリアを支援する団体「ACCEPT  INTERNATIONAL」を設立。 名前にはテロリストを受け入れるという思いを込めました。
永井さんはこれまで170人のテロリストを社会復帰させ、さらにギャング組織の1つを解散に追い込みました。 こうした活動は世界的にも高く評価され、昨年フランスのマクロン大統領が主催する「地球規模の課題を解決する国際的なプロジェクト」に日本から初めて選出されました。
◆永井さんは「私たちはテロリストを排除するのではなく、受け入れることを活動の柱にしています。 大切なのは、対等な人間として接すること」と言います。
永井さんは決して反論しません。さまざまな角度から問いを投げかけ、彼ら自身に考えてもらいます。 さらに、生き方を変えたテロリストたちに職業訓練を行い、経済的に自立できるようサポートしています。

【牧浦土雅さん(27)/ガーナ】
《ビジョン》途上国の生活レベルを上げ、“南北格差”を解消
◆牧浦さんが生活レベルを上げる第一歩として取り組んでいるのが、“稼げる農業”の普及です。 貧困層の7割を占める小規模農家の底上げが格差解消のカギを握っているからです。
牧浦さんは3年前にガーナに農業ベンチャーを設立。 モデルにしたのは日本の農協です。 農家に効率的な生産方法を伝え、種や肥料など必要な資材を貸し付けています。 収穫した作物の販売も行います。 さらに、牧浦さんが目指すのは農業の底上げを社会システムの整備につなげることです。
◆牧浦さんは「農業支援を行うことによって農家の生産性・所得を上げ、そこに付随して、今度は保険を売る、学校を立てる、スーパーマーケットを作るなどして国、アフリカ大陸を発展させていきたい。 あくまで農業は起点。 ゆくゆくは“途上国”という言葉を世界からなくしたい。 これが私の目標です」と言います。

◆ご感想はいかがでしたか? 世界各地でこのような若者たちが活躍していることを知って、とても頼もしく思いました。 日本の政治家だけでなく、世界のリーダーたちには「ビジョンハッカー」の若者たちをぜひ見習ってほしいと思います。
そして、彼らのビジョンをぜひ政策に取り入れて、世界の問題解決に取り組んでほしいと思います。