「商売繁盛の『き・め・て』」

これまでいろいろな方々とのご縁がありました。その中でも特に印象的だっ、たのはS氏ご夫妻です。S氏は「人を大切にする経営学会」の会員で愛知県在住。貸店舗や貸オフィスが本業ですが、近江商人の「三方よし」どころか「四方よし」「五方よし」の経営で、地域に根ざして活躍なさっている経営者です。S氏の会社は『日本のいい会社~地域に生きる会社力』という本の中でも紹介されています。 S氏は、毎月、社外講師を招いて経営セミナーを開催し、社員のみならず一般の人たちにも開放するなどしています。
昨年、その経営セミナーの講師として招いていただきました。講演のテーマは「江戸の知恵を現代の経営に活かす~商人しぐさに学ぶ商人道~」です。経営セミナーでは、江戸の商人たちの商人道、つまり起業家としての心構えとはどのようなものであったのか、また、どのような行動哲学に基づいていたのか、「商人しぐさ」の中から具体的にいくつかお話ししました。
その中で最も好評だった商売繁盛の「き・め・て」についてご紹介いたします。

【商売繁盛の「き・め・て」】
何か物事を成し遂げたとき、私たちはよく「○○が決め手になった」と言いますが、実はこの「き・め・て」という言葉は、商人として成功するために必要な「商人しぐさ」の3つのキーワードからできていると言われています。その3つのキーワードとは何かお分かりになりますか?
その3つのキーワードとは、「気くばり」「目くばり」「手くばり」のことなのです。 つまり、「き・め・て」の「き」は「気くばり」の「き」、「め」は「目くばり」の「め」、そして「て」は「手くばり」の「て」のことです。
それでは、「気くばり」とは、「目くばり」とは、そして「手くばり」とは何でしょうか。

◆「気くばり」とは、想像力、仮設構成力のことだと江戸の商人は言っています。仮説構成力とはあまり聞かない言葉ですが、これは、何か問題がおきたときのことを想像して、事前にスタートからゴールまでのプロセスを想定して、仮説を立て、さまざまな要因を分析して再構成する。そして問題があれば、適切な解決策を見つけるシミレーションができる力のことです。つまり、物事には原因と結果があり、物事は変化するけれども、変化するときには必ず前兆がある。その前兆をいち早く察知して、原因を明らかにした上で対応策を取るのが経営者であり、リーダーの条件であるということです。 最近よく「想定外だった」という言葉を聞きますが、それは「気くばり」が足りなかったということではないでしょうか。
◆「目くばり」とは、現場での観察力、洞察力のことです。つまり、直接現場に行って状況を見て、関係者に会い、必要な情報を集めた上で、何か問題があれば総合的に対応策をを考えるということです。 今、日本の物づくりは大丈夫かと問題になっていますが、神戸製鋼などデーターを改ざんしていた企業の責任者たちにはこの「目くばり」が欠けていたのではないでしょうか。
◆「手くばり」とは、会話力や行動力、解決力など総合的な総合力のことです。 例えば、商人が実際に品物を仕入れた後、どのように売り込むか、また声のかけ方や説明の仕方はどうするか等、具体的な対応が必要になります。その際に必要なのが「手くばり」なのです。コミュニケーション力ということもできます。 さらにつけ加えると、いわゆる大阪商人が大事にする「始末・算用・才覚」に長けているということです。すなわち、計画性に富み、数字に強く、いざというときの判断力に優れているということでしょうか。

この「気くばり」「目くばり」「手くばり」こそがビジネスで成功するための基本的条件だということを江戸の商人たちは「商人しぐさ」の3つのキーワードを使って教えていたのです。
経営者としての資質が厳しく問われる今こそ、経営者の皆さんにはこの商売の「き・め・て」を経営理念の中に活かしていただきたいものです。

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